銀杏古書堂の素人ネタ

Bがボケて、Aがつっこみます。逆にすればよかったと思っています。たまに違うやつもあります。贔屓目に見てセトウツミのパクリみたいなもんです。

◯くるぶしの話

僕は力いっぱいボールを投げた。
そのボールはきれいな放物線をえがき、となりの家の塀を越え、庭で盆栽をいじっていた老人のみぞおちあたりを貫通し、窓ガラスをぶちやぶり、奥の障子をやぶり、キッチンで煮物をつくっていた老婆の左のくるぶしを直撃し、それが外れ、右のくるぶしにぶつかり、その勢いで右のくるぶしを押し出し、左のくるぶしが右足におさまったんだ。
行き場をうしなった右のくるぶしは、立ち上がり、何が起こったか分からず倒れている老婆を横目に、煮物をつくるためにつけられていたガスコンロの火を消し、玄関から外へ出ていったんだ。
僕はその一部始終を目撃していた。
何故か、見えていたんだ。
すいません!と大声で叫び、塀と窓ガラスをぶちやぶり、盆栽をいじっていた老人を小脇にかかえ、老婆に駆け寄った。
「だいじょうぶですか?」
老婆は答える。
「くるぶし。くるぶしを知らないかい」
「さっき玄関から出て行きましたけど」
そうかい、と老婆は肩を落とす。「足の長さが合わなくなって不便になるねぇ。さみしいねぇ」
「すいません。僕がボールなんて投げてしまったから」
「いいや、あんたのせいじゃない。あの子、きっかけが欲しかったんだよ。昨日も『もう僕を自由にしてくれ!』って大声でわめいてね。大変だったんだよ」
「くるぶし、の話ですよね」
「そうだよ」
「はぁ」

世界は広い。
そう感じさせられる一日だったんだ。


「俺を探しているというのはお前か。俺は帰らないぞ。婆さんのくるぶしなんてもううんざりなんだ。せめて若くて綺麗な子がいい」
くるぶしのくせに生意気を言うな、という言葉を「くるぶしのくせに生意気を言」でなんとかとどめ、僕は続ける。「そんなこと言わずにさ、帰ろうよ。お婆ちゃんがさみしがってたよ」
「そんなわけない!これを見てみろ!」くるぶしは体を横に向け、人間でいう脇腹の部分を僕に向けてきた。そこには切り傷が多数あり、イソジンで消毒されていた。
「あの婆さんにやられたんだ!これは立派なDVだ!」
彼の発した叫び声に通行人がこちらを振り返り、
「低い位置から聞こえたな」「いや、高い位置から聞こえただろ」「いや、真ん中だろ」「それでもミラか」「いや俺、ミラじゃねぇし」とざわつく。

「DVではないよ」
「どうしてだ!」
「君がお爺ちゃんにやられていたのなら、それは立派なDVだろう。でも君はお婆ちゃんにやられたんだろ?お婆ちゃんは自分の体を傷付けたに過ぎないだろ」
「でも」
「単なる自傷行為じゃないか。
それに君はお婆ちゃんの体の一部に過ぎない」
「そんな…僕は、僕は」
それから小一時間、くるぶしは荒れ狂うように泣き続けた。

僕はくるぶしと話すのにも飽き、お婆ちゃんの家に向かったんだ。

昨日、夜遅くまで磨いていた、とっておきの斧を持ってね。


「お婆ちゃん、入るよ」
僕が金太郎よろしく斧をかつぎ、玄関のドアを開けると、老婆が立っていた。鬼の形相ならぬ、蟹、あるいは鰐の形相で、わなわなと震え、こっちににらみをきかせていた。
「主人の…主人のかたき!」足の長さが違うからか、恐ろしくゆっくりとしたスピードで、僕に向かって飛びかかってくる。
今更?と思いながら、僕はそれをひらりとかわし、反撃に転じようと斧を振りかぶった、その時、
「やめろ!」
という声と共に爆発音が響き、やがて脇腹が燃えるように熱くなる。撃たれたのか?僕は撃たれたのか?重力の思うがままに地面に吸い寄せられていく。最後の力を振り絞り、背後に目を向ける。
そう、くるぶしである。
くるぶしごときが…やりやがったな…この野郎。どうやって銃持ってどうやって引き金を引いたんだよこの野郎。馬鹿野郎この野郎。

「婆さん!ごめんよ!俺、俺、どうかしてたみたいだ!」くるぶしが老婆に駆け寄る。感動的なシーンだな、と僕は力つきそうにかる。
しかし、ふとサブタンクの存在を思い出し、それを使い、僕のHPはMAXと戻っていく。
そして右手にある、夜なべをして磨き上げた斧で老婆をぶった切り、左手のロックバスターでくるぶしをチリにする。
「手こずらせやがって」
僕が肩で息をしていると、奥の部屋のドアがガチャっと開いた。
「ご苦労。約束の金だ」
僕は胸に穴をあけた老人から金を受け取る。「もう業者は呼んである。死体のことは気にするな」
「了解」
帰ろうと、玄関のドアに手をかけたがもう一度振り向き、その老人もくるぶし同様、チリにする。
そこで携帯電話が着信を告げる。
すぐにそれに応じる。

 

「お電話ありがとうございます。くるぶしヤマト引越しセンターでございます!」


その日見上げた夕陽が、僕の目には青く映ったんだ。それはそれは、青い夕焼けだった。青い光を放つ太陽が山間に沈んでいった所を僕は確かに見たんだ。

 

◯火

B「上司の知り合いが勤めてるどっかの会社の話やねんけど」
A「うん」
B「社員の人がミスをしてしまったらしくて、そこの社長にゲエ吐くぐらい怒られてんて」
A「うんうん」
B「んでその人、次の日から会社こんくなったらしくて」
A「ああ、もう嫌になってもうたんや」
B「んであとあと分かったらしいねんけど」
A「えっ、何が?」
B「焼身自殺してたんやって」
A「こわっ」
B「やろ?んでもう1人も同じ感じで社長にゲエ吐くぐらい怒られて辞めてから焼身自殺した人がいるらしくて」
A「怖すぎるやろその会社。てかさ、怒られ度合いを表す時にゲエ吐くぐらいっていうの辞めてくれへんかな?」
B「んで、もう1人も同じ感じでゲエ吐くぐらい怒られたらしくて」
A「また吐いた」
B「その人は普通に次の日も来てたんやけど、週明けからこんくなったらしくて」
A「……まさか」
B「今回は焼身自殺じゃないねんけど」
A「そうなんか」
B「家が火事になってそれに巻き込まれて死んだらしくて」
A「また火やん」
B「せやねん。まあここからは俺の推測にすぎひんねんけど」
A「なんか探偵みたいになってるやん」
B「おそらく」


A「うん」
B「その会社にはさ」


A「うんうん」

B「炎系の能力者がおると思うねん」
A「なんやねんそれ」
B「炎術士がおると思うねん」
A「オチそれ!?」

 

◯幸せ

B「この前久しぶりにCに会って思い出したんやけど」
A「うん、何を?」
B「2万借りてんねん」
A「いつぐらいに借りた2万なん?」
B「学生の時やから7年ぐらい前」
A「むっちゃ前やん。Cも覚えてないんちゃう?」
B「いや、覚えてると思うなぁ」
A「そう思うなら余計に早く返さな」

B「タイミングがなぁ」

A「タイミングとかないやろ」
B「でもな」
A「うん」
B「あいつ結婚して子供おるやん?」
A「うん」
B「仕事もある程度安定してて、車とかも買ってるわけやん?」
A「うん」
B「てことはさ」
A「うん」
B「不幸の逆なわけやん?」
A「幸せ、でええやん。なんで不幸ベースで物事を考えんねん」
B「2万ぐらいよくない?」
A「最低やな。よくないやろ」
B「結婚して子供おる事が幸せってわけではないやろけどさ、一般的にはそうなわけやん」
A「まあなぁ」
B「30歳独身男ってだけでちょっと常識ないと思われてる節もあるやん」
A「そうか?それは考えすぎちゃう?」
B「この前も結婚して子供おる友達と飯食ってて」
A「うん」
B「もうすぐあいつの結婚式やなぁって話になってさ」
A「うん」
B「新郎も新婦も知り合いやねんよ。その場合の祝儀どうする?って」
A「えっ、3万とかでええんちゃうの?」
B「両方とも知り合いやから倍の方がええんちゃうか、って言ってて」
A「そういう考え方もあるんやな」
B「やろ?んで俺も疑問に思いながら、それやったら3万の倍かぁって適当に返したら」
A「うんうん」
B「それやったら6万で割り切れてまうから5万か7万で、って言ってきて」
A「ほうほう」
B「はぁぁぁぁぁ!?そのぐらい分かっとるわ!って思って」
A「まぁ日本人ほとんど知ってることやしな」
B「そうそう。その時の、結婚して子供もおる俺はやっぱり常識人、結婚してないお前はやっぱり非常識人感が物凄くて」
A「んでどうしたん?言ったん?」
B「その時、そいつの奥さんと子どもも一緒にご飯食べてたんやけど」
A「うん」
B「その話をしてる時にちょうど子供が何かをこぼしてさ、その奥さんが、もぉ〜!って言いながらそれを拾って子供の口をおしぼりで拭いてあげててさ」
A「うん」
B「子供は右手にスプーン、左手にフォークを持ってテーブルをとんとんしてて。満面の笑みで」
A「……」
B「それをその友達は菩薩みたいな顔で見てて」
A「……」
B「その菩薩みたいな顔で嫁と子供を眺める友達を俺は見てて」
A「どんな顔で?」

B「ウノって言うの忘れたことに気付いた時みたいな顔で」

A「分かりにくいねん。んでどう思ったん?」
B「ええなぁって」
A「負けとるやないか」
B「幸せってきっとこういう事を言うんやなぁって」


A「ちなみにそれと2万を返してない件は一切関係ないから、すぐに返すように」
B「御意」

◯プラス2

B「昨日久しぶりに大学の同級生に会ってさ」
A「うん」
B「そいつもう結婚して子供がおんねんけど」
A「うんうん。何歳なん?」
B「えっ、木曽さんちゅう木曽さんちゅうは46歳やで」
A「知らん知らん。誰が急に謎かけでブレイクしてたねづっちの相方木曽さんちゅうの年齢聞くねん。その友達の子供が何歳か聞いてん」
B「そうなん?」
A「何でそんなスッと木曽さんちゅうの年齢が出てくんねん」
B「もうすぐ二歳らしくて」
A「うわぁ。可愛かった?」
B「えっ、木曽さんちゅう木曽さんちゅうは可愛くないで」
A「木曽さんちゅうから離れろ」
B「ああ、子供がってこと?可愛かったな〜。ものすごいポテト食べてたわ」
A「ポテト好きなんや。フライドポテトかな」
B「シェパードパイやけど」
A「おませが過ぎるやろ。俺まだ食うたことないわ」
B「ギネス片手に」
A「大人やん。大人でもシブいやんギネスて」
B「くぅ〜!言うて」
A「大人やん」
B「飲み終わったらまた哺乳瓶にギネス補充して」
A「子供や、いや、それはもう大人やん。プレイやん
B「でも急にぐずり始めて」
A「急に子供やん」
B「ママにいい子いい子されて落ち着いて」
A「子供やん」
B「んで、くぅ〜!」
A「またギネスいってるやん」


B「ごめん、オチがバレてそうでなかなか言われへん」
A「木曽さんちゅうやろ?」
B「いや、ダブルボギーやけど」
A「どうやって!?」

◯悪いやつ

突然「待て!」と言って走り出すP。何が何だか分からずとりあえずそれを追うQ。

 

Q「待て待て!そんな走って誰を追ってんの?」
P「いやいや、これで誰か逃げるやつがいたらそれは悪いやつですよ、そいつから金まきあげましょ」
Q「お前が一番悪いやつやわ。それと、もし、もしの話やけどな。そいつがほんまに悪いやつで、例えば殺人犯とかやったらどうすんねん」

P「いやいや、そういうやつらは不審な動きすれば怪しいの分かってるはずなんで、追われたからって不用意に逃げたりしないはずなんですよ。顔を変えたりするやつもいるぐらいですからね。焦って逃げるようなやつにそんな極悪人はいないと思うんですよねえ」
Q「はあ」
P「せやからね、中途半端に追われて中途半端に逃げるやつは中途半端に悪い、人間として中途半端なやつなんです。 そんなやつから金とっても誰にも怒られないですって。だからもっと早く走って!」
Q「やっぱりお前が一番悪いやつやわ。同じ考えのやつがおってそいつに追われたらどうすんねん」

 

P「そんなやつは」
Q「そんなやつは?」
P「殴り殺したったらええんですよ」
Q「悪っ」

◯パチ審

B「この前テニス部の時の友達と話してたんやけどさぁ」
A「うん」
B「負け審っていう制度があんねんよ」
A「負けた人が次の試合の審判をしなければならない。やむを得ない場合を除く、ってやつ?」
B「あぁ、テニスの教科書で読んだ?」
A「テニスの教科書って何やねん」

B「そうそう。そんな感じのやつ」
A「一試合目はどうするん?予選会場のやつがしてくれるとか?」
B「いや、セルフジャッジやねん」
A「むっちゃ緊張するやん」
B「せやねん。まぁほとんどは大丈夫やねんけどさ、たまにはずみでアウト!とか言うてもうたりしたら」
A「喧嘩なるんちゃうん」
B「ネット挟んでのな」
A「うんうん」
B「セルフジャッジで一回アウトのコールしてもたらほとんど覆ったりはせえへんから、相手もやり返してきたりすんねん」
A「もうパチ審のやり合いや」
B「やっぱりテニスの教科書読んだ?」
A「だからテニスの教科書って何やねん。そんなんあんの?」
B「いや、パチ審って言ってたからさ」
A「はずみで言うてもたんや」

B「せやねん、パチ審のやり合いになってさ、どっちかが負けるやん?」
A「うんうん」
B「負け審があんねん」
A「パチ審して負けて負け審」
B「そうそう。んで予選会場のやつの試合の負け審とかやったら、そいつの応援のやつに後ろからむっちゃ言われんねん」
A「何て」
B「財布落としましたよって」
A「ええやつやないか」
B「ライン見えないときは言ってくださいねって」
A「ええやつやないか」
B「小腹空いてませんか?菓子パンでも買ってきましょうかって」
A「なんやねんそいつ」

B「どうしますか?って」

A「とんでもない舎弟肌やなそいつ」
B「確かに空いてきましたねって」
A「それはお前が言うてるよな?」
B「スイートブールでいいですか?って」
A「……大きくて丸くて甘いパンな」
B「スイートブールは嫌いなので塩バターパンをお願いしますって」
A「好意に甘えてわがまま言うな」
B「分かりましたって。どこに売ってますか?って」
A「……」
B「ローゲンマイヤーに売ってますよって」
A「……」
B「分かりましたって。今から買いにいってきますって」
A「……」
B「お願いしますって。どれぐらいかかりますか?って」
A「……」
B「ちょっと分かりませんねって。往復2時間ぐらいかかりそうですねって」
A「おい」
B「じゃあお先にあがらしてもらいますねって」
A「……」
B「じゃ…」
A「もうええ」

 

◯ウォシュレット

A「ウォシュレットこわいわぁ」
B「ウォシュレットこわないよ。何がこわいん?」

A「こそばくないん?中に水が入ってきそうな気もするし」

B「全然そんなことないで。気持ちええし、汚れも落ちるし」
A「人生で一回も使ったことないわ」
B「そうなん?もったいないな。一回我慢して使ってみ。やばいから。俺もうないと無理やもん」
A「誘い方が麻薬やん」